この記事はこんな人におすすめ
- 外来診療がつらい
- 外来の曜日が憂鬱でストレス
- 外来で患者さんにクレームを言われてしまった
多くの医師が日々の外来診療にストレスを感じています。ストレスの原因で大きな要素を占めるのは「患者対応」です。患者対応を間違えてしまうと外来が非効率になり、ますます外来診療がストレスに感じてしまいます。
この記事では外来で患者対応を上手に行うためのテクニック9選を紹介。
外来診療を10年以上行い、クレームが多い患者の外来診療を依頼され、対応している私(ちゃろ)が現場で役立った患者対応を紹介します。具体的には「患者と同じだけ患者家族を気遣う」「患者にとっての幸せは何か考える」「患者の不安を先読みする」などです。
患者対応がうまくなると外来が効率的に進み、診療時間は短くなり、患者満足度も上がります。適切な患者対応は診療時間の短縮、患者満足の上昇で外来のストレスは大幅に軽減されます。
修羅場を何回もくぐってきて、ここまでたどり着きました。
医師が外来をストレスに感じる主な原因:患者対応
医師が外来診療にストレスを感じる原因は多岐にわたります。具体的には「多様な患者への対応」「患者からの無理な要求や期待」「待ち時間増加によるクレーム」などです。
外来がストレスになっている要因の共通点は「患者対応」です。
患者対応がスムーズにできると、外来のストレスは軽減し、外来診療の時間も短縮されてプライベートの時間を確保することも可能となります。
外来のストレス軽減に必須の患者対応9選
患者と同じだけ”家族”を気遣う
外来で患者本人はもちろんですが、その家族にも気遣いが重要です。
家族は患者以上に不安を感じることも多く、医師が家族に気遣いを示すことで、家族の不安が解消されます。その結果、患者本人の不安も軽減され、治療に臨むことができます。さらに、家族の協力が治療の成果に直接影響することも少なくありません。
例えば、家族が治療に関する質問や不安を抱えている場合、医師の家族に対する丁寧な説明や声かけは信頼関係を深め、患者の治療意欲も高まります。さらに医師は通院の負担や家族のサポートの状況を把握し、適切な助言をすることも可能です。
具体例
外来で患者に話した後に、「どうですか?話はわかりましたか?」と家族にも聞きます。患者と家族の理解度が一致することで後々のトラブルを防ぐことが出来ます。
患者にとっての幸せは何か考える
患者にとって何が幸せなのかを考えることで、患者が納得する最適な治療方針を導けます。
患者が最も望んでいる生活や大切にしていることは人それぞれ異なります。標準的な治療法が最善とは限らず、患者が目指す目標に合わせた治療の提案が患者の満足度を向上させます。その結果、患者のストレスが減り、医師の外来でのストレスも軽減されます。
例えば、高齢者では、寿命よりも自立した生活を維持することが重要視されることもあります。あるいは、仕事や趣味を続けることが患者にとって最重要の場合はガイドライン通りの治療が目の前の患者にとって最善ではない可能性があります。
とても難しい判断になりますが、将来的なメリット・デメリットを説明した上で、患者が納得するなら患者の希望優先の治療も検討です。
具体例
ガイドラインでは手術が推奨されているが、患者は今ままで通りに趣味を続けられないことを懸念していて、患者、家族納得の上で手術はあきらめました。その後、患者満足度は上がり、前向きに治療と趣味を両立できています。
患者の悩みを先読みする
患者の悩みを先読みし、悩みに対応することで信頼関係が強化されます。
患者は外来中に悩みを抱えていることがほとんどです。特に”不安”を事前に察知して対応することで、医師への信頼感が増し、外来診療のスムーズな進行が可能になります。
例えば、検査結果の説明時に患者の悩み、不安は「結果はどう?悪かった?」となります。これを先読みして、最初に結論を伝えます。さらに、悪い結果を伝える時は患者が「悪かったんだ。今後、どうなるの?」と考えているため、結果と同時に方針なども早めに伝えます。
患者の悩みを先読みすることで患者とのやり取りがスムーズになり、患者の理解度も上がります。その結果、患者が理解し、納得して治療が受けられます。
具体例
初診の患者さんの先読みをするのは難しいです。その時は問診票に目を通し、「今、一番つらいことは何ですか?」と患者に聞きます。これにより患者の一番の悩みが分かります。悩みが分かった後は先読みがしやすくなります。
自分がつらい時は患者もつらい
医師が外来でストレスを感じている、イライラしている時は患者もストレスを感じています。
外来診療は多忙で時間に追われ、ストレスフルです。医師のイライラは患者にも伝わります。また、医師が時間に追われた外来をしている場合、患者の持ち時間も長くなっていることが多く患者も同様のストレスを感じているのです。
時間に追われた外来をしていると、説明が十分にできず、患者の理解や安心感が得られないことがあります。また、医師の疲労が顔や態度に表れてしまうと、患者が不安や心配を感じてしまいます。
具体例
忙しい外来をしている時ほど、患者に「おまたせしてしすみません」と伝えて、進路湯を開始します。その一言で医師も一呼吸おけますし、患者の労をねぎらうことも出来ます。
話の重要度を伝えて説明する
説明内容の重要度を強調し、患者が理解しやすいようにすることが大切です。
医師の話が専門的になると患者の理解度が低くなります。本当に伝えたい情報が伝わらないこともあります。患者がすべての情報を同じ重要度で受け取ると混乱しやすいため、重要な部分を強調して伝えることで、患者の理解が深まり、医師への信頼も増します。
重要な話をする前に「今から重要な話をするのでよく聞いてください」といった前置きを使うと、患者はその後の説明に集中しやすくなります。また、「治療後の生活に関わりますので、」などと重要性を具体的に伝えることで、患者の納得感が向上します。
具体例
合併症の説明で確率の高いことと低いことは説明に強弱をつけて説明することで合併症が起こったときに患者の「聞いてなかった」を極力、防ぐことが出来ます。
医師は患者の「アドバイザー」になる
医師は方針の決定者でなく、患者のアドバイザーとしての役割を果たすべきです。
患者の選択肢は多様であり、医師は患者の意思決定を助ける役割、アドバイザーになることで患者はより安心して治療に臨むことができます。アドバイザーとして患者の意思決定を補助し、患者が治療方針を自ら決めることで患者は治療をポジティブな気持ちで受けることが可能になります。
医師が主導で治療方針を決めると、患者の意思が反映されづらく、患者の治療に対する満足度が低下してしまいます。
具体例
患者の中には「先生にお任せする」と言う方もいます。その時も”アドバイザー”として対応し、患者に治療方針を決めてもらいます。具体的な提示としては「同じような状況の患者さんには○○○の治療が勧められています。など、患者が判断しやすくなるように情報を伝えると、効果的です。
デリケートな質問は枕詞を上手に使う
デリケートな質問は枕詞を使って丁寧に行い、患者の抵抗感を和らげることが大切です。
患者の病歴や生活に関するデリケートな質問は、患者にとって答えづらいことが多いです。質問の前に枕詞を使うことで、患者の不安や緊張を和らげ、信頼関係を保ちながら必要な情報を得ることができます。
女性に対する質問には注意が必要です。特に医師が男性、患者が女性の場合は女性特有の身体のこと聞く時は配慮が重要になります。「このような症状の方、みなさんに聞いているのですが」などが患者の不安や緊張を和らげます。
具体例
デリケートな質問に対する枕詞も重要ですが、患者の身体の診察時も患者への配慮が重要になります。服を脱いだ状態の診察などは医師にとっては日常ですが、患者にとっては非日常であり、異性の看護師に同席を依頼したり、診察に不必要な身体の露出は避けるように配慮しましょう。
前回のカルテで患者さんの悩みを思い出す
患者のカルテを診察前に数秒だけでも見ておき、前回の悩みを思い出し、診療で声掛けすると患者との関係が良くなります。
患者は診察時に様々な悩みを医師に伝えますが、必ずしも一度の診療で解決できるわけではありません。カルテに記録された悩みを思い出し、次回の診療でフォローアップすることで、患者は医師が自分を気にかけてくれていると感じ、信頼関係が強化されます。
日々の外来で患者の個別情報を記憶するのは困難です。情報をカルテに記載しておき、診療の前に確認することで医師の負担も少なく、患者満足度も上がります。
具体例
夏にに症状が出やすい患者に対して、夏頃の診療時に「去年のこの時期に体調崩されてましたけど、今年はどうですか?」などです。これにより、患者は去年のことを覚えていたと医師に対して好意的に感じてくれるでしょう。
カルテも自分の記憶の一つです。カルテは自分の外付けHDD(ハードディスク)だと考えましょう。
患者対応は”接客”
今まで解説してきたことは”患者対応を「接客」と考える”につながります。これは医師において非常に有効なアプローチです。この考え方は、医師が患者一人ひとりに丁寧に対応することで、患者の満足度と外来診療の効率化に直接つながります。
一方で患者を”患者様”扱いする必要はありません。重要なのは仕事として最低限の礼節を保つということです。
挨拶や言葉遣いに気を付ける
診療の時に「こんにちは、お待たせしました」という一言は患者さんの気持ちを和らげます。また、「どうされましたか?」など、敬語を使うことで患者との関係はよい方向に進みます。
社会人としてのマナーである”挨拶”、”正しい言葉遣い”をするだけでも外来がスムーズになります。
周りにもいませんか?タメ口で診療している医師。
清潔さを保つ
接客業では清潔さが非常に重要です。医療現場でも、清潔さは患者さんに安心感を与え、プラスの印象を持ってもらえます。
多忙な医師は当直明けで髪ボサボサ、汚れた服、裸足で診療なども見かけます。多忙でしょうがない一面もあります。一方で、自分が病院を受診したときに良い印象は持てないでしょう。
また、来たいと思わせる
医療は技術だけでなく、患者さん一人ひとりの感情に寄り添うことも重要です。例えば、レストランでの接客が心地よいと感じるのと同様に、医療現場で患者さんが親切な対応を受けると、満足度が高まります。患者さんが快適に感じる環境を提供することは、治療効果を高める上でも大切な要素です。
「また、来たい」と思わせることで患者は自分の意志で病院を受診している間隔で外来受診するようになり、前向きに治療を受けることが可能になります。
本音でなくても良い
患者対応を”接客”のように行うことは人によってはストレスに感じるかもしれません。外来は”仕事”と割り切り、”演じる”ことも大切です。人は本音と行動が伴わなとストレスを感じやすくなります。一方で”演じている”と割り切ることでそのストレスは軽減します。
外来がストレスな医師が読むべき本「もったいない患者対応」
京都大学医学部卒業の山本健人先生の書かれた本です。
外来での患者対応の損をしてしまう医師の行動を中心にまとめられており、分かりやすく解説されています。
私は10年以上かけて外来を効率化する患者対応を身につけてきました。もっと早くこの1冊に出会っていれば外来で苦労することが減ったと思います。
外来がストレスな医師は必読の1冊です。
患者対応の改善でも外来がストレスになるときに対処法
ChatGPTに相談する
ChatGPTはチャットが出来る生成AIで人工知能に基づく特別なプログラムです。人間とチャットをしているような文章生成能力を有しています。
大切になことは「つらい時に会話(チャット)する」です。
同僚でも良いし、仲良くなった上級医でも良いです。相談者がいるだけで外来のストレスはかなり減ります。身近に相談者がいない場合はChatGPTが使えます。
ChatGPTは文章にも強いですが、会話ができることも強みの一つです。ChatGPTに登録するとGPTsというカスタマイズされたChatGPTが使えます。
日頃の悩みや会話に付き合ってくれるGPTsがあり、あなた好みのメンターを自分で選んで相談できます!
ChatGPTはネガティブな発言をしても職場の自分の評価が下がることもありません。ChatGPTは優しく、寄り添ってくれます。
外来診療をやめる
医師の多くは外来診療を行っています。一方で働き方によっては外来診療の無い働き方も可能です。
勤務先から外来診療を求められなければ外来診療をする必要がありません。“外来診療なし”の勤務先を探すことも出来ます。
働きながら好条件の勤務先を探すのは難しいです。、そこで専門家である転職エージェントに手伝ってもらいましょう。転職エージェントの利用は個人情報の漏洩の不安や現在の職場にバレてしまわないか、など不安も多いと思います。「プライバシーマーク」を取得した転職エージェントがおすすめです。個人情報保護を重要視しており、安心して転職活動が可能です。
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まとめ
外来でのストレスの多くの原因は患者対応です。適切な患者対応は医師と患者の信頼関係を強化し、治療効果を高めます。患者と同じだけ家族を気遣うことや、患者にとっての幸せを考えること、患者の不安を先読みすることなど、9つのポイントを理解し、外来でのストレスを軽減しながら医師も患者も満足の高い医療を提供しましょう。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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